はじめに
視覚聴覚二重障害は、「見る」と「聞く」の両方に障害のある状態で、「盲ろう」としても知られています。本障害を持つと、情報入手、コミュニケーション、移動などが極めて困難となります。特に先天性や若年性に発症した患児、患者では、教育、就労、生活に大きな問題が発生します。現在、視覚と聴覚のどちらか単独の障害に対する医療は、かなり進んでいます。しかし、視覚聴覚二重障害の患者は少なく、全国に点々と存在しており、原因も多様であるため、その医療はこれまで確立していませんでした。このため、平成29年度より厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)「先天性および若年性の視覚聴覚二重障害に対する一体的診療体制に関する研究」が採択されて、本障害の原因となる難病に対する診療への取り組みが開始されました。今回、その成果の一部として「先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の原因となる難病の診療マニュアル」の一部をオンラインで公開します。本内容は、本障害を持つ患児、患者、そのご家族と医療者に、一刻も早く必要な情報を届けるために準備したものであり、今後も随時、内容の追加、更新を継続します。執筆は、先天性および若年性の視覚聴覚二重障害の医療に経験豊富な医師、医療関係者と、患者会、家族の会、支援団体、教育機関からの多くの協力を得て進められました。ご多忙の中を多大な貢献をして頂いた協力者に心より感謝いたします。
2018年10月
厚生労働科学研究費補助金[難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)]
「先天性および若年性の視覚聴覚二重障害に対する一体的診療体制に関する研究」
研究代表者 松永 達雄